二重ドーナツ型構造が持つ面白い性質って?(Spring-8 NEWS 2020.9月号より)
みなさんこんにちは!パスカルです!
そろそろ寒くなってきましたね~。秋を感じます!🍁
突然ですが、私は高校生の頃からSpring-8を用いた研究をするのが夢でして、Spring-8のホームページで月一で記載される「Spring-8 NEWS」を最新号が出る度に読んでいます。
最新号である2020年9月号も、もちろん読んだわけですが…
過去一でテンションが上がる内容でした!!!!
というわけで!今回はこの感動を伝えたく、個人的に激アツだった研究成果の紹介を簡単にさせて頂きます!!
そもそもSpring-8って?
高校物理選択でなければなかなか知らない施設なのではないでしょうか?
Spring-8とは、兵庫県の播磨科学公園都市にある大型放射光施設です。
放射光(X線)とは、電子を光とほぼ等しい速度まで加速し、磁石によって進行方向を曲げたときに発生する、細く強力な電磁波のことです。
放射光を当てることによって、目に見えないような小さな物質の性質を知ることができます。
二重ドーナツ型構造が持つ面白い性質
さて、ここからが本題です!!
今回私が紹介するのは、
巨大な環状分子の合成に成功し、その分子が実は、ドーナツが上下に2つ並んだような世界に前例のない構造と不思議な性質をもつ分子であることが明らかになった
という研究成果です。
この研究は、合成化学と機能材料化学を専門とする東京都立大学の伊與田正彦客員教授が行ったものであり、なんと我らが名古屋市立大学総合生命理学部の青柳先生が共同研究したものでもあります!
今回の研究の主役となるのは、チオフェン分子!!
OPTRONICSより引用(http://www.optronics-media.com/news/20200326/63660/)
私たちの生活には欠かせない有機化合物。
それらの多くは電気を通さず、磁石にも反応しません。
しかし、チオフェン分子(図の左上)を鎖状につなげたポリチオフェンは、電気を流す性質と光透過性を示します。
伊與田先生は、中央と末端で性質が変わってしまう、鎖状のチオフェンの中央部分を知らべるために、輪の構造を作ったそうです。
それが環状チオフェンオリゴマー(図の右上)。
環状にすることで、末端の無い構造になりますよね。
分子を作成して結晶化し、その結晶の構造をSpring-8のX線を使って解析したそうです。
するとなんと!
ドーナツ型の環状チオフェンオリゴマーが上下に2つ重なった1つの巨大分子になっていたそうなんです!!(図の左下)
さらに、巨大分子の中にはジクロロメタン2分子が取り込まれてそうです。
これはすごい!!
通常、環状の分子は不安定で重なることはないのに、重なってたんです!!
さらに詳しく調べてみると、磁界をかけると環電流による電磁誘導が起こって、外部磁界を打ち消すことが分かったそうです。
つまり、磁界中では、分子リングに沿って回転するように電気が流れる環電流特性を持つことが明らかになったんです!!(図の右下)
ナノサイズの有機分子がコイルの役割を果たすなんて、不思議ですよね!!
一気にテンションが上がりました(≧▽≦)
ざっくりした説明になってしまったので、詳しく知りたい方は、参考文献に載せているURLから実際のSpring-8 NEWSを読んでみてください!
では今回はここまで!(^_^)/~
図の引用・参考文献
Spring-8 NEWS 101号(2020.9月号) (最終閲覧日2020年10月19日)
http://www.spring8.or.jp/ja/news_publications/publications/news/no_101/